ひとり出版社という言葉が使われだす前から、出版社は零細企業が多い。2〜3人でやっているところがむかしからあるし、今でもそうだ。

なぜひとり出版社という言葉がでてきたかというと、それが生き方の提案につなげたからだと思っている。「ひとり出版社を始めるという新しい生き方」ぐらいの意味だろう。実質はあまり変わりはなさそうなのだけれど、その生き方を選択する人の背景が変わってきた。

強く思うのは、出版の経験がなくても出版社を始める人が多いということだ。業界の人たちからすれば、「なんでそんなとんでもないことを!どうやってビジネスをするの?!」という印象だと思うけれど、従来型(?)の出版社ではなく、独自の出版の世界に入ってくる人は少なくない。しかも編集経験はまるでなくても始めているケースもある。それを無謀と思うのは業界の人だ。

以前、独自の形態で出版しているオーナーと話したときに「今ほど出版がおもしろいときはないと思うのですよね」と言っていたことが今もあまたに残っている。当時は「え〜、そうなんですか?!?!」というのが自分の感想だった。

かつての自分も含め従来型出版の人たちは、部数、売上高、原価率、消化率、在庫数、返品率などという数字に疲弊しているという時代なのに、味方を変えればこうも魅力的な業界だと映っていることに驚きだった。この人はまったく出版業界で働いた経験がない。だからこその世界観だと思った。しかも別の事業とのコラボで、コアなファンにウケている。

こういう現実を目の当たりにすると、業界で必要とされている、編集の力は何なのか、ライティングの力はどういうものなのか?そもそも企画力って何?などと考えざるを得ない。もちろん、ベストセラーを狙う出版があってよい。多くの人に読まれてナンボの世界ではあるけれど、自分が既定路線としてその世界に身をおいていいのかどうかは別のことだ。

小規模出版社を展開できるのは、出版に対して新たな力を見出しているかどうかだ。そういう可能性は、原価率に疲弊しているマインドやボロい雑居ビルの一室からはうまれないのだと思う。その力を見出すのは、月なみな表現だけれど、世の中には自分が世に出すべきものがあるのかもしれないという好奇心と、それを世に出すために必要な、常識にとらわれない発想力、ともうひとりの自分が感じる不安と抵抗にまけずに実行できる力だと思う。

そんなことを考えていると、今まで培ってきたであろう編集力とかライティング力とか企画力は何なのか、よくわからなくなってくるけれど、今はそれでいいのだとも思う。もっと視野を広げよ、自分。ゼロからのスタートだ。

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