最近、信州上田(の近く)に行ったり来たりしていて、ちょっと慌ただしい(風邪も引いたり^^;)。その合間に書店にいっていて、この間、閉店前の小さな書店に駆け込み、思わず店主と長話することができた。その書店は前から知っている田舎町の中にポツンとある店。いまどきこんな書店はめずらしい。でもうちの本は扱ってくれている。

話を聞けば、トーハン扱いだけどランク外だから思うように本が入ってこないこと、この街では人が書店にはこないこと、教科書の取扱いは「とある事情」でできないこと、この店のあとを継がせることはないこと、同じ形態で書店をやっている人たちは不動産の大家さんが多いことなど、いろいろ話を聞くことができた。

総じて「いい話」ではないけれど、話しているときにふと思ったことがある。この書店から1キロぐらい離れたところに温泉がある。地元の人に愛されている場所で、僕も上田に行けば必ず寄る場所だ。その温泉が1日800人来場者数があると、どこかで読んだことがある。あんな田舎でそんな人がくるのかと驚きだったことをそのときに思い出した。店主とはまた来ますねと挨拶をして帰ってきた。

翌日、その温泉に行ってみた。午前10時から午後9時までオープンしている。昼なのに、結構来ているなあと。風呂上がりに、大広間兼食堂みたいなところで、ゲラを読んでいたら、自分が唯一知っている、そこで働いている女性と話すことができた。「ここでイベントできませんか?」と伝えたら、「音楽家とか落語とかやったことありますよ、支配人に伝えますよ」と話していたら、なんとそこに支配人が通りがかった。紹介してもらって話をした。支配人もあの書店の店主のことはよく知っている。小さな町だ。「提案してもらえれば検討しますよ。町にはいろいろ施設もありますし」ということだった。そんなことを話した日の夕方に、またまた電話した地元の人が「町長を紹介するよ」という話をもらった。なんなんだ、この展開は!と驚くばかり。

自分が入った最初の出版社の人が、『書店は「待ち」のビジネスだ。本が入ってくるのも待っているし、お客様がくるのも待っているし、お客様が本をもってレジにくるのも待っている』と言っていたことを思い出す。何十年も前の話だ。いい時代。

いまの時代は待っていては仕事にならない。書店を回ると、もちろんお客が書店に来るのはまっているし、レジに本を持ってくるのもまっているだろうけれど、それはどこか「祈り」に近い感じもするし、少ないスタッフで大量の本をさばくためにはどうすればよいのかを強く考えているような気もする。なんでもそうだけど「待ち」のビジネスは終わりをつげ、「まち」のビジネスにならないといけないんだろうなあ。そんなことを思わせてくれた時間だった。

Related Articles: