起業についての質問を受けることがある。いっぱしのことを言える立場ではまったくないのだが、それでも感じることはある。

ビジネスをするときの「心構え」は絶えず頭の中に入れておかなくてはいけないし、お客様に提供する「スキル」は常に磨いておかなければならない。これは当たり前のことだ。会社員時代にどれだけ成果を残しても、目の前のお客様に提供できなければ、「あやしい商売をしている人」になる。それこそ、自分の強みはなにか?とか、自分は何でお役に立てるのか?とかビジネスで自分が解決できることは何か?と問うことはすべての人に必要だ。

こういうことを起業前に知っておくことは有益だし、自分がそこまでやれるかどうかもイメージすることも大事だと思う。そのためのコンサルティングを利用するのも悪くはないと思う。

ただ、起業の初期段階として大事なのは、ビジネスモデルだ。モデルといっても複雑なものではなく、単に「受託ビジネス」か「見込みビジネス」かということだ。それぞれメリットデメリットがあるので、どちらがいいとか悪いとかいうことではない。

受託は、平たく言えば、「請負」仕事だ。相手が設計した企画に自分が必要とされれば声がかかる。一方、「見込み」はお店を開いてお客様を待つイメージ。自分が商品やメニューを開発して、製造または仕入れをして、値付けをして販売をする形態だ。

一般に、受託は、経費がかからない。商売道具を持って現場に行けば解決することが多い。事務所を持つ必要もなければ、広告宣伝する必要もない。見込みは、たいていの場合、場所が必要になる。それはホテルのラウンジかもしれないし、大きな事務所かもしれない。お客様と会う場所を自ら用意をしなければならないということだ。さらに広告宣伝費や人件費も大きな負担だ。

売上の特徴でいえば、受託は利益率は高いが、売上には限界がある。安定しているとも言える。見込みは、経費はかかるが売上はよくも悪くも激変する。一般にリスクが高いのはこちらとされている。

出版業界で独立しようとすると、たいていがフリーライターかフリーランス編集者。自分も経験している。いずれも受託ビジネスだ。自分はさらに大学講師をしていたので、受託ビジネスをふたつやっていたということだ。

先日、業界ではトップではないかと思えるほどのライターの方と会った。雲の上の存在だが、その方も受託ビジネスにちょっと限界を感じているようだった。ボツになる原稿は多いし、企画が止まることもある。要するに、収入のメドが立ちにくいというのだ(ただ業界トップの人なので、収入は圧倒的に高い)。こういうリスクは受託で仕事をしている以上なくなることはない、だから自分発のビジネスを考えていると言っていた。

つまり言いたいことは受託で仕事をするのは楽だけど、楽しいとは限らない。今やっていることが見込みビジネスになるかどうかもポイントだと思う。自分は今の収入のほとんどが見込みで、支出も圧倒的に増えたけれど、楽しいと感じられる。受託はどうしても下請けとして扱われがちなのだ。自分はそれがおもしろくなかったので見込み変更した。それでもよければまったく問題ない。自分なにを不快と感じるかだ。

心構えもスキルも大事だけど、こういう意味のビジネスモデルを考えることもフリーランスの幸福度に大きく影響している気がする。

Related Articles: