先日行った『売上を、減らそう。ーたどりついたのは業績至上主義からの解放(ライツ社)』出版記念イベントはめちゃくちゃおもしろかった。「営業わずか3時間半」「どんなに売れても100食限定」「飲食店でも残業ゼロ」ー表1に掲載されている文言を読むだけでも、今までにない業態だということがわかる。単純に、なぜそんなことが実現可能なのだろうか?と思い、書籍を読み、イベントに行った。

結果的には、創業者である中村朱美さんの、従業員を幸せにしたい、という並々ならぬ覚悟によるものだということがわかった。トークイベントでは、従業員をお客様を思っている、という言葉もあったし、自分がやりたくないことは従業員にはさせない、と書いてある。今はお店にいることは少ないけれど、すべての店舗のすべてのポジションができる、とおっしゃっていた。

本を読んで印象的だったのは、開業する2ヶ月前に出場したビジネスコンテストでは、中小企業支援の専門家や大学教授からこのアイディアを「そんなの、うまくいくわけはない」「アホらしい」と言われたというくだり。原価を50%に設定したとき、税理士に本気で止められたとも。佐谷さんが経験したこととまったく同じだったからだ(中村さんも佐谷さん同様、飲食店の経験はナシだ)。

こういうエピソードを聞くと、人のビジネスを「判断する」仕事は本当に大変だなと思う。仕事柄、仕方ないことかもしれないけれど、自分が経験していないことはすべて否定する発想は本当に危険だと思った。こういう立場になくても、こういうことは日常の会話でもよく行われている。「人のブレーキを踏むことが世の中をつまらなくしている」というのは『「ありえない」をブームにするつながりの仕事術』に書いている言葉だけど、この本を読んんでも本当にそうなんだろうなと思った。

それにしても「新しいことをやろうかな」と言っている人に、親でもないのに、ブレーキをかけるのはなにゆえなのだろうか。その人が失敗しても本人にはまったく関係ないことだし、とりあえず応援することは難しいことなのだろうかと、今痛切に感じている。

エンゼルスの大谷翔平選手がメジャーで二刀流を目指すとき、野球評論家は、ほぼ全員批判的だったことを覚えている。「自分の現役時代は到底できなかったけれど、頑張ってほしい」と言えないのはなぜか。「ピッチャーに専念すべきか?打者にすべきか?」みたいな、本人からしてみればどうでもいいことを議論していたこともあった。今の大谷選手の活躍を見れば、そのことで議論する人いない。

佰食屋もパクチーハウス東京も、専門家に「いいじゃん、頑張って」と言われなくても、自分たちでなんとかしようとしたところがすごさだけど、もっともっと無謀な挑戦に暖かくていいよね、と思う。ぶっきらぼうにいえば、どうせ自分に関係ないことなんだからとりあえず応援すればいいのじゃないかと思う。たとえその人が成功しなかったとしても、「あなたが、いいね!と言ったから始めたけれど、失敗したから責任とって」とは言われないし、その人がそんなありえないことを考えたプロセスを知ることで学べることはたくさんある。自分では「ありえない」と思うことこそ、学ぶチャンスなのだ。

トークイベントが終わって、中村さんに『「ありえない」をブームにするつながりの仕事術』を渡したら、すぐ読んでいただき、「大きく共感する部分も沢山あり、大変楽しく拝読致しました!ありがとうございます!」と返信をいただいた。

中村さんの話を聞いた直後に、自分がある人にブレーキをかけられたことを「こういうことだよね」と思って、「即GO」できたことはよかった(僕のケースは、ありえないことでもなんでもないけれど、ブレーキをかける人がいるものだ)。トークイベントは、そのほか、ざまざまな覚悟や想いをお話いただき、鳥肌が何度も立った。これからどう消化するか。好きなことばかりやっていないで、もっともっと世の中のお役に立ちたいと思った日だった。

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