ネットを見ていたら、飛び込んできたこの記事。文章の書き方としていい教材になる。通常は、クライアントだけのページでシェアしているが、今日はここでお知らせする。まずは一読を。

気づくことは以下の通り。

・リード部分で、2段落の個人として「金持ち…」の話が浮いている。読者には関係ない話。

・■で中見出しが入っているが、4つの■ともデータの列挙。右肩下がりの業界であることを示している。が、それは自明のことと思われる。右肩下がりの具体的な数字を知りたい人のみ役に立つが、このタイトルでは具体的な数字を探している人にはスルーされる。

・出版業というくくりが大きすぎる。印税の話を持ち出すということは著者は出版業なのか?ライター、デザイナーもしかり。

・「多品種少量生産」はいつの時代においても出版文化の特徴示。本がうれなくなったから「多品種少量生産」になったのではない。ここでは「粗製乱造」という言葉が適切なのでは。

・儲かる著者も入ればそうでない著者がいるのが当然。いつの時代も同じ。両者の割合が変わってきただけ。同じ論理で、儲かっている出版社とそうでない出版社がある。全体のトレンドを語っても、業界が衰退していること以外のメッセージはなんの新規性もないし意外性もない。

・衰退産業だけど、こんなに出版をうまく活かしている例がある、とか、衰退産業だからか、何冊も出版したけれど、まったくいいことがなかった具体例などを挙げたら「読める」。

・最終段落の「出版業界には頑張って欲しい」的な文章はなんとも雑。リード部分で、読者は業界の人の文章として期待して読み進めているのに、最終段落では業界の外にいる人として発信している。思わず「おい!」とツッコミをいれたくなる感じ。著者の立ち位置が不明確。

そもそも「出版業は儲かるか」というテーマが乱暴すぎる。書くのであれば、出版業を定義(限定)することと、儲かるということはどういうことなのかを示す必要がある。個別のデータは正しいけれど、その持ち出し方を誤ると何を言っているかわからなくなるいい例。データは大事だけど、そもそもなにを言いたいかを明確にすることが先。そのメッセージに意外性、独自性があるかどうかを考える。

※クライアント参照用

Related Articles: