本文中の「引用」の機能は数あると思うが、その1つは、著者が引用する書籍によって、その本の内容を理解できる読者を限定することだと思っている。引用された本は、「この本を読む上で必須ですよ」という暗黙のメッセージを発することができる。もちろん著者は、その本を読んでいない読者でも理解できるように説明をする必要があるが、ただ読んでいない読者の理解は、読んだ人のそれには追いつかない。

逆に言えば、本文中で引用されている書籍をまったく知らなければ、今はその本を読むタイミングではないかもしれない。もちろん思い切り背伸びをして読むのもいい練習だけど、そこから得られる効果は著者が思っているより少ない。

書き手からすると、自身の経験だけを書くより、適度にそのほかの本を引用を合わせることで、より理解してもらえることもある。まったく他ジャンルの本を引用することで、議論の深さを提供することもできる。こういった知識は平たく言うと「教養」ということかもしれないけれど、その一端は引用された書籍からうかがい知ることもができる。

どの世界でも高い専門性だけでなく、それを支える広範な知識が必要と言われるが、文章を書くという文脈で、この言葉を考えると、「いかに自分の文章に光る引用ができることか」におおいに関係している気がする。

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