通常、出版するときに、初版を何部印刷するか?の決定は発行直前になされることが多い。事前に出版社の営業が書店に注文を取りに行ってその数から予測した数字をもとに検討し、最終的には営業・編集・宣伝などの関係者が集う「部数会議」で決定される。

結果、企画会議で提出した初版部数より、ずっと少ないこともある。もちろんずっと多いこともあるが、企画時より多く刷れるのはごくわずかだ。

直前にならないと決めないのは、出版社がリスクをとらない姿勢の現れともいえる。「書店さんの反応が悪いから」といって部数を下げるのは当然かもしれないが、営業マンの「逃げ」にも利用できるのも事実。そして著者からすればかなり困惑するケースも多い。手にする印税を考えれば、印刷部数はダイレクトに影響するからだ。ただ、現実問題として、著者は自分の商品がいくらかわからず、文章を書いていることになる。

10月13日付けの業界紙『新文化』では、ポプラ社が発売前3ヶ月前の部数決定で、増売している事例が掲載されている。企画時から売るために必要な情報を書店に提供する姿勢が見えるのは、とても興味深い。部数はどう決定されるかというと、発売3ヶ月前に、編集者が、営業・宣伝部にプレゼンをするのだが、この時点でカバーデザイン、タイトル、サブタイトルを確定させるという。営業や宣伝が、最終型に近い形で書店に持っていけると、初版部数の見込みがたつということなのだろう。ある種、出版社の覚悟や営業マンの姿勢が問われるカタチだ。それが正しかったかどうかは半年後に検証するという。

この改革を進めた社長は、医学部出身、生保、証券会社勤務、コンサルタント会社経営をへて、ヘッドハンティングされた人なのだという。他業界からすれば、出版の常識は非常識に映ったことだろう。ただ、こういう外から見る目が新たな改革を呼び起こすのはどこの業界でも同じことなのだと思う。

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