モノを買うときには、買いたいモノと引き換えにお金を払う。買いたいモノに込められた期待が実現するかどうかはそのときにはわからない。だから皆がいいと言っているモノを、できるだけ安く買いたいと思うのは当然だ。そのほうが失敗がないと思えるからだ。

実際そのモノを手に入れてみると、買う前の期待に応えてないこともある。おいしそうと思って買った食べ物が自分の口に合わなかったり、似合うと思って買った服が意外と手持ちのモノと合わなかったり、通勤に便利と思って買ったカバンがそうでもなかったり…ということは日常的に起こることだ。

モノを買う前に、「試してみる」ことができるとすれば、消費者の失敗は確実に減る。試しに食べてみる(お美味しかったら買う)、試しにその服を日常で着てみる(似合っていれば買う)、試しにそのカバンを通勤で使ってみる(使いやすかったら買う)などなど。消費者にとってとてつもなく便利なサービスだけど、これは商売にならないことは明らかだ。

ただ、これと同じようなことがコンテンツビジネスでは行われている。シリーズモノの漫画で最初の数巻だけタダで読めるとか、音楽も最初の数秒だけタダで聞けるとか、書籍の数ページ分がオンライン書店でタダで読めるとか、ネットの仕組みで、試してみることが可能になった。考え方を変えれば、無料のメルマガは、有料商品のお試しとも言える。そのモノを少し触れてからお金を払うことは消費者にとっては安心を生む。

コンテンツ提供者がこれから考えるべきことは「いつ課金するか」ということではないかと思う。消費者に喜んでお金を払っていただくためには、消費者がそのコンテンツに触れるワクワクと、お金(あるいは大金)を払うドキドキが混在させなくてはいけないということかもしれないし、いかに安心感や信頼感を感じていただくかということかもしれない。逆を言えば、そういう関係が構築できてから、課金をしなくてはならないということだ。

そういうことを書籍で考えると、Amazonの「立ち読みページ」で十分なわけはない。もっとそのテーマについて深く知りたいと思ってもらえるようなお試しのコンテンツが書籍の販売にも必要になってきているのだと思う。

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