自分は「何を言うか」より「誰が言うか」を大事にしていて、部数は少ないけれど、著者の周りの人たちに「あの人が考えていることを知りたい」と思うような本にしたいと思っている。もっと丁寧な言い方をすると、「だれが、何を言うか」を扱うということであり、「何を」だけにテーマしたくはない、と思っているということである。

人にフォーカスすると、その人の人生をよく知ることになる。というより、その人の人生を知らないと本は作れない。その人の人生を知る方法はいろいろあるのだけど、どの方法をとっても大きなテーマのひとつになるのが「お金」のことだ。このテーマを書籍にするかどうかは別にしても、いろいろ知ることになるのだけど、こういうことを知るとその人と切っても切れないテーマだなとつくづく思う。

だれもががその向き合い方に苦労しているし、浮き沈みもある。こちらが羨ましいと思うような収入を得ていても、意外(ではないかもしれないが)悩みは深かったりする。自身でビジネスをしている人は、お金の変遷は仕事の変遷だ。親子の関係とかも同じ感覚だ。知れば知るほど、親の影響は大きいなと思う。こういう泥臭いところを知ると本当に書くべきことが見えてくる気がするのだ。これは自分の経験を考えてもそう思うし、自分のクライアントにはめちゃくちゃリアル語っている。自分が本を書くとしたら、このテーマはやはりはずせない。

だから、かどうかはわからないが、人にフォーカスした文章なのに、お金のことを一切語らないのは、本当のことを言っていない気がすることがある。お金にまつわる紆余曲折はだれにでもあるはず。でもだいたいいい結果しか書いていないか、凹みを意図的に作っている(ように感じる)。

人にフォーカスして本を作るということはその人の人生をまるごと引き受けるということだ。それをどう表現するか、の腕が試されている。たいていの著者はそんなことを世に出すことに躊躇するけれど、それがオープンにできたら、より自分に自信が持てるようになるのだと思う。それが自己開示の強さだ。自分はクライアントと一緒にそんな本を作りたし、自分もそういう本を書いてみたい。

この意味をもっと知りたければ、下重暁子さんの『家族という病』(幻冬舎新書)とその本を書いた経緯を記した『人生という作文』(PHP新書)の2冊をオススメする。

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