『明日のプランニング』(講談社現代新書)を読んだ。タイトルから内容がわかりにくいが、いかに自分のやっていることを伝えるのか?ということをテーマにしている。副題は「伝わらない時代の「伝わる」方法」。とっても興味深い本だった。
情報発信が圧倒的な速さで進み、我々の生活は膨大な情報に取り囲まれている。ときとして、それが情報の洪水として感じ、災害と思う人も少なくない。SNSの中毒になっていた人が突然SNS離れを宣言する、などはそのいい例だ。そんな時代に、不特定多数の人に情報を伝えようとするのは無理がある、というのが著者の主張だ。
伝えるべきは、不特定多数ではなく、知人友人だというのだ。伝えるというより知ってもらうというほうが正しいかもしれない。情報には、「世の中のこと」「仲間のこと」「自分のこと」に関する情報がある。SNSの登場により、「仲間のこと」に対する興味関心が急激に増えた。ニュースよりもFacebookの投稿が気になるのはこのことを端的に示している、と思う。
伝える側が気をつけることは、情報を「世の中のこと」としてではなく、友人知人に「仲間のこと」として受け止めてもらえるかどうかがキーになる(この本も知人のFacebookで紹介されて、彼の興味や関心がおもしろそうだと思ったので手にとっている。著者に興味があるわけではない)。そしてその情報が相手にとってどんな接点があるかどうか、オーガニック(自然)な言葉として口にしてもらえるかどうかを意識すべきということが書かれている。そのためには、とにかく露出すればいい、PVが増えればいい、と言ったマスの時代の発想から脱却すべき、と伝えている。
本作りでも最近同じようなことを考えて(折にふれて口にして)いるので、これらの論調はとても腑に落ちるものだった。商業出版は不特定多数にリーチする方法だ。本を出せば、北海道から沖縄まで配本されるし、見ず知らずの人に手にとってもらえる可能性を手に入れられる(あくまでも「可能性」なのだか)。ベストセラーはこの仕組みのなかで誕生する。この仕組みは魅力的なのだが、この本で書かれているファンベースのマーケティングからは程遠いものになっている。言い方を変えれば、商業出版は、ネット情報発信をしているようなものなのかもしれない、と思わせる。つまり商業出版の可能性と限界の両面を考えなけばというのが、最近の個人的なテーマになっている。その方向性を探る手がかりになりそうな1冊。