この間Amazonで注文していてちょっとイラッとしたことがあった。その品物が「明日届く」予定になっていたからだ。なんとなくその日に届くことを期待していた。緊急のモノでもないのに。
いろいろなモノがネットで買えて、即届けられるサービスは「あると便利」だ。ただその「あると便利」は「ないと不便」になってしまう。それだけ人はなれるのが早い。麻痺すると言ってもいいかもしれない。それはこの間お会いした稲垣えみ子さんが言っていたことだ。
先日、小さな出版社を営む人と話す機会があった。彼女の悩みは、配本だった。いかの読者をお待たせしないかが気になっていて、注文が入った場合に配送業務は自社ではやれない。だから取次を通す、というようなことを話していた。
限られた人材と資金しかない小さな出版社では、お客様に待たせることなく出荷するのは大変なことだ。そのために取次と契約し、在庫も抱えなくてはならない。大手のネットショップのサービスのスピードに慣れている読者に対するサービスとしては、当然のことかもしれない。ただ、それは本当に必要なことなのか?とも思う。注文してからどんな本かを楽しみに待っている時間があってもいいと思う。というより、そういう楽しみに待ってくれるような本を作らないといけないということなのだけど。
自分が大学院の学生だったころ、洋書を新宿の紀伊國屋でよく注文していた。注文した本が到着するのは1ヶ月半から2ヶ月ぐらい。価格も為替レートの2倍ぐらいの感じだったと思う。書店に書籍が到着すると我が家に電話がかかってきて、時間があるときに取りに行く、そんな感じだった。そうやって買った書籍は今でも強烈に覚えている。今の時代にそのゆるい時間感覚はどうかと思うけれど、今日注文したモノが今日届かないことにストレスを感じる自分も異常なのだと思う。
自分の出版社としての1冊めの企画が進行中だけど、配送は週1回にしようと思っている(直販メインなのでその必要さえないかもしれないが)。業界では異常だけど、それでいい。小規模出版社が出荷スピードを大手と揃えるのは経営を圧迫する大きな要因だ。そこに時間をかけず、浮いた時間を本作りに専心したほうがよっぽど意味あることだと思う。