通常出版企画は、編集者との打ち合わせの中で、企画の修正・検討を繰り返して、著者が書くにふさわしいテーマが決まります。著者が提案した企画案が企画として成立するまでに通るプロセスを考えてみました。

企画案が変更される3つの視点

先日、ある著者が、「思い通りには、企画は成立しないね」と言っていました。残念がっているという意味ではなく、人に意見をぶつけることの大事さを感じているようでした(この言葉は、だれにでも当てはまることですね)。著者のオリジナル案から修正されるケースを考えてみると以下の3つがあるように思います。

1)専門性が高くマーケットが小さいので、よりすそ野を広げたテーマを設定する場合

2)テーマの設定は一致しているが、アプローチが違う場合

3)提案した企画より著者自身が魅力的なコンテンツを持っている、ということを自覚していない場合

もっとすそ野をひろげた企画に

1)は専門性が高い著者にありがちです。自分の専門分野なので、それを書きたいと思うのは当然で、もちろんその分野で執筆してもらったほうがいいものができるのですが、あまりにもマーケットが見込めないと、編集者としては、もう少しすそ野を広げる方向を考えないといけません。とはいえ、自分自身は、著者に目線を下げてもらうことが結構むずかしいと思うのと同時に、どこまで下げてもらうかについては、いつも頭を悩ませています。「想定読者のレベルを落としてもっとわかりやすく」とお願いしたために、著者が混乱して、原稿の質が下がるケースもあるのです。そこの見極めは常にしないといけないところです。

著者のコンテンツが最も伝わるアプローチに

2)は、よくあるパターンですし、このやり取りがないほうがめずらしいぐらいです。テーマの設定について編集者が賛同している場合、あとはアプローチの仕方が次の議論の対象になります。著者が事例集にしたいと言っていても、もしかしたらQ&A集のようにしたほうがいいかもしれないのです。図解が可能であれば、それをウリにした本にすることができるかもしれないのです。これは編集者が主導で考えないといけない部分です。もちろんこのへんまで気を配る著者もいるのですが、編集者の仕事としては、当然やるべきことです。著者が持っているそのコンテンツはどうすれば一番伝わるか、の視点です。その結果によっては、著者からすれば、まったく別の企画のように見える(感じる)こともあるのです。

著者のもっと魅力的なコンテンツを掘り出す

著者と打ち合わせを重ねている中で、ふとしたときに、まったく別のアイディアが浮かぶことがあります。よくよくその方向性をふたりで考えていくと、「そっちのほうがおもしろい!」となり、結果として当初案とはまったく別企画が出来上がることになります。これが3)の例です。今、プロデュースをしていると、このケースが意外に多いと感じます。ただ、これを実感するには、大げさに言うと、著者が持っているコンテンツの全部を知る必要があります。よく知らないと出てこないアイディアが多いのです。売れている本の目先をちょっと変えて、とはまったく違った企画の立て方です。

まとめ

いずれにしても、著者と編集者とは密なコミュニケーションが必要です。メールも電話も必要ですが、自分は、本当に書くべきテーマが見つかるまでは対面を重視しています。プロデュース案件では当然のことですが。そこに対して時間をかけて質を高められるか、で企画の質が決まると思っています。そして著者の持ち込み企画は、この検討ができないことが多いので、通過率が低いとも思っています。

==【昨日の活動・所感】==================

・5時に起きて、友人3人と早朝ランに。有楽町→東京ディズニーランド→有楽町で30キロのコース。復路の後半、脱水症状になり、ボロボロでしたが、なんとかゴール。でもそのあとしばらく動けず。自宅に帰るのも大変でした。思えば、昨年11月に出た富士山マラソンで脱水になり、ゴール後医務室へ。それから練習中も含め、何度かこの症状が出ています。先日の戸隠トレイルもそうだったし…。対策をちゃんと考えないと。

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