出版業界は長い不況が続いています。自分が知るだけでも、いろいろな打開策を模索しているようですが、いちばん期待しているのは、電子書籍のようです。マンガを発行している出版社は、マンガの電子化にも力をいれていそうです。

「電子書籍に期待」に違和感があるのはなぜ?

こういう議論でいつも違和感があるのは、よい企画を立てることに対する改善案が見えてこないことです。そもそも中身があるから読むに値するのだし、読者の知的好奇心をかりたたせるから、本を読むわけです。電子書籍ありきでは決してありません。読むに値しないものは、紙だろうが、電子だろうが一緒です。読みたいものがあるから読むわけで、近年は読みたいものを電子書籍で読みたい人が増えている、ということなのです。

編集者の力が引き出せる環境に

出版社の多くは、ひとつのコンテンツを紙と電子の両方で出版することが増えると思いますが、その前に企画の質が当然のことながら問われるわけです。ちょうど昨日もある出版社に勤務している編集者の友人とメールのやりとりをしていたら、「1カ月6冊作ることになっている」と言っていました。そんなに担当していたらよいモノは作れるわけはありません。予定通り出版することが目的になっているわけで、そこにはより良い本にするモチベーションは消えてしまいます。自分もかつては、年間30点ぐらい担当していましたが、どんなにがんばっても、どんなに残業と休日出勤を繰り返しても、1点にかけられる時間とエネルギーは減少します。印刷会社が印刷機を回転させるのとは事情がまったく違います。

負のサイクルから抜け出すのは企画から

現状「本が売れない→売上確保のため点数増加→編集者の業務が激増→企画の質が低下→本が売れない…」といった負のサイクルに陥っている感じがあります。このプロセルの中で着手すべきは、質の向上です。そこが確保できるからこそ、電子書籍にも期待できるし、各社が今躍起になっているコストカットも生きてくるわけです。点数確保のために出版するのは、資源のムダ使いでしかありません。

コストカットするより、部数を伸ばす方法を考える

ちなみに制作コストはかなりコストカットされていますが、安く作ればいいというわけではありません。出来る人に安い金額で仕事をしてもらっても、モチベーションは上がらないし、手を抜くだろうし、次の仕事につながりません。そんなことをするよりも、印刷部数を1000部伸ばせる方法を考えたほうがよっぽど生産的です。部数が上がれば制作にかけられる金額が増えるのです。もちろん流通のコストなどで本当にムダなところがあれば、もちろんカットすべきと思いますが、だとしても、なぜ今までそのカットをしなかったのか、の議論をする必要があります。

まとめ

こういう話をすると「そんなの当然」という声が聞こえてきます。ただ、当然のことを真剣に議論していることは多くなく、電子やら、マーケティングやら、コストカットの話ばかりしているところも多いように感じています。伸びている会社とか好調の会社は、やっぱり企画にこだわっている、というが私の印象なのです。

==【昨日の活動・所感】==================

・早朝から野球の試合に。1対7で敗戦。相手のレベルから考えれば仕方ない、か。

・午後からコワーキングに行って、単行本の入稿準備。かなり集中できた。帰ろうと思ったら、そこにいた知人からショッキングなニュースを聞かされる。あまりにもショッキング…。

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