人文系専門書の良書を数多く出している未來社という出版社があります。大学院でハーバーマスという思想家を勉強していた時に、ハーバーマスの翻訳本の多くがこの出版社から出版されていたので、自分にとってかなり印象の強い出版社でした。というか、本の価格が高かったので、より記憶が鮮明だったのかもしれません。ハーバーマスの代表作『コミュニケイション的行為の理論』は3分冊で、1冊5,000円でした。あまりにも高かったので、この3分冊を買うために、単発で駐車場の警備のバイトをした記憶があります。そのほかにも未來社の本というか、未來社から刊行されているハーバーマスの本をたくさん買いました。

ちなみにこの本に衝撃をうけて、修士論文のテーマにしました。

既存の価値観を問い直し権力に対峙する

その未來社の社長が『出版とは闘争である』という書籍を最近出しています。現在の出版環境下で「専門書、人文書を刊行することは文化闘争である」と語っています。詳細は省きますが、出版の本質は、既存の価値観を問い直し権力に対峙するところにあるとの姿勢を貫いています。

既存の学問ジャンルにはまらない研究スタイル

この本を読むと、なぜかハーバーマスを勉強していたときのことが思い出されます。そしてなぜハーバーマスの書籍がことごとくこの出版社から出されていたのかがわかるような気がします。社会学・政治学・哲学、時には心理学のような幅広いテーマを扱う彼の思想こそが、既存の価値観への破壊だったわけです。ハーバーマス自身はそもそもそんなジャンルは意識になく次々に著作を残したわけですが、それだけユニークだったということでしょう。それゆえ批判もありましたが。

尖った思想家を日本に紹介する尖った出版社

自分が通っていた大学院では、哲学専攻でハーバーマスを研究することはかなり異色だったようで、指導教授を決めるのにも苦労したし、先輩から「それって哲学?」と嫌味と言われた記憶もあります。当時は、それだけ彼の思想は、日本の学問体系には合わなかったということなのかもしれません。そういう意味でいえば、そうとう尖った出版社ですね。改めてラインナップをみると、よりその姿勢がみてとれます。(参考:未來社ホームページ:http://www.miraisha.co.jp/np/index.html

最後に

この本(『出版とは闘争である』)はブログをまとめているので、1項目の分量は短めで、テーマも多岐にわたっています。専門書、人文書の出版に興味のある方はこのブログオススメです。(参考:http://www.miraisha.co.jp/shuppan_bunka_saisei/)ちなみに、通信教育でメディアコミュニケーションを専攻していた、イギリスの大学院でも公共性をテーマに論文も書きました。未來社との出会いは自分の中は大きく、深いのです。

==【昨日の活動・所感】==================
・長年お付き合いしている会社の人と会食。新たな企画、プロジェクトの打ち合わせ。定期的な情報交換。

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