『ランニング登山』の裏側5回目。オリジナルの写真が使えないことは前回書いた通り。カバー写真も例外ではない。「あの写真を使いたい」という声もあったけれど、自分としてはそれはないなと思っていた。あまりにも書店店頭になじまない気がした。

じゃあどうするか?の段階でかなり迷った。迷うほどの数の写真を提供してもらったので、それはそれで選ぶのが難しった。でも「下嶋さんらしいかどうか」で決めようと思った。とはいいつつ、著者にはお会いしたこともないので、イメージをするのはなかなか難しく、そこから乖離して、知らず知らずのうちにランニングの1冊の書籍として成立すればよいと考える瞬間もあった。そのたびに本文を読み、象徴的なシーンはなにかをイメージした。

快速登山という言葉をこの本で知り、新鮮だった。松本大さんのコラム名もこの名前にした。著者はのぼりもくだりも快速だったけれど、象徴的なのはのぼりの速さな気がした。というわけで、登っている写真にしようとした。顔は写っていたほうがいいのか?そうでないほうがいいのか?オリジナルが写っていないし、ランニング登山という概念は特定の個人のモノでもないので、著者以外の人の顔はないほうがいいかなと思った。

同時に、下嶋さんの娘さんに連絡して、「走っているときの写真はありますか?」とお尋ねしたところ、「走っている写真はいいのがないんですけど」と言って1枚送ってくれた。ロードの大会に出たときのものだった。かなりボケている。どこかで使おうと思ったけれど、なにせ解像度低く厳しかった。

そんな経緯があり、今の写真を使うことになったのだけど、タイトル文字を白抜きにしたため、文字が写真に沈むことになった(ランニング登山のラの部分が写真の背景に馴染みすぎてしまっていた)。デザイナーさんに修正をお願いをして今の形になった。

デザイナーさんは自分が会社時代にいたときからお世話になっている斉藤よしのぶさん。絶版新書シリーズをお願いしている。今回もいろいろわがままを聞いてもらった。いつも丁寧に接してくれる。会社をやめて7年目だけど、こういうお付き合いさせてもらえることはありがたい。

改めていろんな人の力があって本ができている。編集者がやるべきことは自分の想いを伝えて、人に動いてもらうことだと思う。自分がやれることは実はあまり多くない。それを忘れて本づくりしようとすると、周囲の人も本来はクリエイティブな仕事なのが単なる作業になる(そうやってできている本は結構ありそうだけど…)。

というわけで、次回は松本大さんのコラムについて(かな?)

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