編集者にとってタイトル決めが一番の悩みどころ。正解はないし、やってみないとわからない部分も多いです。いつもできるだけ尖った表現にと思うのですが、自分が大きな衝撃を受けたのは、『人間はいろいろな問題についてどう考えれば良いのか』(新潮新書)という本。この本のタイトルを見た時には、「こんな普通の言葉でいいのか?」とびっくりしました。
いろいろな問題とは?
このタイトルから予想して、「いろいろな問題」が列挙されているのかと思ったら、目次はこんな感じ。予想とはまったく違っていました。
- 第1章 「具体」から「抽象」へ
- 第2章 人間関係を抽象的に捉える
- 第3章 抽象的な考え方を育てるには
- 第4章 抽象的に生きる楽しさ
- 第5章 考える「庭」を作る
まえがきの最後に「この本で語りたいこと」の段落があり、
「人間は、いろいろな問題についてどう考えていけば良いのか」ということを、これから語ろうと思う。ただ、主観的で具体的な考え方は、もうみんなが知っていることだし、「論理的思考法」というような沢山の本で説明されているところだから、今さら書く必要がない。人間としてのバランスを取るためには、その反対側にある客観的で抽象的な考え方が必要であり、これについて書く。
と記されています。個別具体的な問題には触れないということです。2年ぐらい前にこれを読んだときに、この本を手にとった動機が恥ずかしくなった感覚を覚えています。たしかにいろいろな問題に対処するためには、抽象的に考えなければならない。そして抽象とは「ものの本質」に迫ることだと実感させられました。
日常的な言葉で本質を語る
こんなテーマにもかかわらず、「抽象」という言葉をタイトルに使わなかったのは、結果的には本質を言い当てているような気がしました。自分だったら、絶対に「抽象」という言葉を入れたくなりそうですが。日常的な言葉で本質を語る訓練の大切さを学びました。
最後に
この本は定期的に読みたくなる本のひとつです。具体的なことは書かれていないですが、だからこそ、いつ、どんな問題にぶち当たったときでも得るものがあると感じています。