一般に、不特定多数の参加者を想定した市場では、わかりやすさが求められる。多くの場合、お金などの多くの人に、普遍的に認められている価値に収斂される。それは本も同じことだ。顔の見えない相手に文章を書くときには、わかりやすさが大事だし、メッセージもより多くの人に意味あるものにしなければならない。
ただ、顔の見える相手に対しては、そんなわかりやすい価値は必要ない。たとえば、知り合いの職人さんが手で作った工芸品を値切って買おうとは思わないし、できるだけ安い価格を期待することはない。その人がつけた値段で自分が買いたいかどうかと考えるだけだ。そういう人たちの集まりは、いわば特定少数なのかもしれない。
ただ特定少数へ価値を提供できているのであれば、それは特定多数へ広がる可能性を秘めている。その多数とは何人かという定義はできないけれど、少なくも今まで知らなかった人が、その人なり、商品なりを知り、お客さんになる得るということである。
そうやって広がった特定多数の人たちとはいい関係が築けるはず。同じ2000人でも不特定多数を狙って2000人になるのと、特定少数が広がって2000人になるのとでは質としてまったく違うということだ。
最近、特定少数から特定多数への流れで本作りはできないものかと考えていて、かぎりなく可能性を秘めているのでは?と思っている。