共創出版プロジェクトでご支援いただいた方々へ『図で解りあえる技法』が終わったら、ちょっと風邪気味な感じ。この本の制作の裏側を書くことにする。

『図で解りあえる技法』の印刷会社は中央精版印刷株式会社、組版会社は朝日メディアインターナショナル株式会社というところにお願いした。この本だけというより、弊社が出版する書籍はこの2社にお願いすることにしている。相見積もりはとらない。

その理由(というか、そのまんまだけど)相手に「御社しかいませんので、お願いします!」ということを伝えているからだ。それを言える会社を決めるまでにはそれはもちろんいろんな会社とお付き合いさせていただいた。会社にいたときには特に。

ただ、ひとりで出版業を始めてから、かつてお付き合いいただいた会社(2社)の態度ならびに条件が劇的に変化した(=悪化した)ことを経験してから、それまでの「外部の会社を選ぶ」という発想は捨てなければならないと思った。委託する仕事はその人達に選ばれないとうまくいかない。選ばれないとどうなるか?相手も仕事なので「やりません」と言わない。でもうちの仕事の優先順位は下がり、見積もりにいろいろ計上されることがわかった。小規模出版社への扱いはそんなものだ。相見積もりは、選んでいるようで、選ばれているのだ。

そもそもなぜ相見積もりが必要なのか?と言えば、一社の見積もりで損をしないかどうかを確認するためだ。相場がわかっていれば必要はなくなる。たとえば、もし事務所の引越しするときにいくらするのか?の相場感覚は僕にはないので、相見積もりを取りたくなるけれど、今作っている本の相見積もりは不要。どれぐらいの金額かは理解できる。

印刷会社の見積もりはかなり複雑なので、きちんと判断するためには知識が必要(印刷会社によって見積もりの出し方も違う)。担当者に数量の根拠をすべて教えてもらえればあとは単価を確認すればよいことになる。これは編集者には不可欠なスキルだと思う。もし金額が高いと思えば、他社にお願いするのではなく、事情を話して、今の担当者に相談すればいいだけだ(そんなことは一度もないけれど)。

ただそれより大事なのは営業担当者との関係性だ。いくら安くても、担当者が動いてくれなかったら、まともな本づくりはできなくなる(そういう事例にはいろいろ遭遇した)。前述の2社は「御社しかいないので、お願いします!」と言えば、きちんと向き合ってくれる会社だ。組版会社は、僕のむちゃなお願いにも、「あ、なんとかします」「ちょっとやってみます」という言葉に何度も救われ、本当にお世話になった。印刷会社での出張校正のあとには、お疲れ様会をやっていただいた。こんな小規模な案件に、こんな気配りをしてもらって感謝しかない。年間に発注できる数が少ないからこそ、相見積もりはやめて、お付き合いする会社を決めたほうがいいというのが持論。組織とおつきあいするのではなく、人との関係を深めたいと強く思っている。

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