ある本のコラムに使うために、その著者が知り合い(20代後半、男性)に声をかけて、自身のキャリアを書いてもらった文章を読んでいて、感じたことがあります。

人を感動させるのは、その人の経験であり、けっしてうまい文章が感動させるのではないということです。

この原稿は、ある若者が自分の人生を試行錯誤しながら、今まで歩んできた道を振り返っているものなのですが、人とは異なった人生を送ってきたことで、常に葛藤や不安と向き合っていることがよくわかるのです。

文章は決してうまいとは思いません。でもこの人の思いは確実に伝わります。本にする際には、この文章に手を入れることになりますが、こんなことは編集者であれば、だれにでもできます。

ただこの人の紆余曲折の経験やそのときの感情は、この人でないと経験していないことなのです。経験しているので、文章にできるわけです(ということは、ブログネタがないということはネタになるような経験をしていないから?ということになりますね…)。

中味(経験)か形(うまい文章)かで言えば、間違いなく中味が大事だと思います(『伝え方が9割』とか言う本が売れていますが…)。

編集とは「その人の経験」を、ストレスのない文章やレイアウトで読者に伝えることが仕事です。当たり前のことかもしれませんが、形さえ整えれば、それでおしまい、のような本があふれる中(?)もう一度この原点を思い知らされた文章でした。

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