なぜ文章のアイスブレイクが必要なのか

ビジネス書を書くときにストーリー形式で書くとよい、と言われることがあります。今日は、その理由と意味について考えてみます。

ビジネス書は、読者が本当に読みたい本や推理小説を読むようには読んでもらえません。読者に、あなたの伝えようとすることに集中しやくする仕掛けを読者に提供する必要があるのです。その仕掛けこそがストーリー形式ということなのです。

ストーリーには明確な結論はありません。ストーリーは、読者の興味と関心をその文章に惹きつけるために存在するのです。

例をあげてみましょう。ストーリー展開されている文章を『考える技術・書く技術』(ダイヤモンド社刊)から引用してみます。

~~以下引用
 いったいどれだけ多くの記事や書籍、講演、ワークショップが「社員を思い通りに動かすにはどうしたらいいか」という題材を取り扱ってきただろうか?

 モチベーションの心理的な構造は大変複雑であり、すでに解明された部分についてもその信頼性は疑わしい。憶測がほとんどであるにもかかわらず、世の中にはまやかしの新説が次々を現れてくるし、しかもその多くに学術的にお墨付きさえ備わっている。

 この記事の後もあやしげな新説は出続けると思われるが、少なくともここに記載する概念は多くの企業や組織で実証済みのものである。たとえわずかであっても、憶測ではなく知識の比率をあげることができれば、と思っている。
~~引用ここまで

いうまでもなく、これは社員のモチベーションをどのようにあげるかを述べた文章ですが、最初の段落が読者の関心をひく文書になっています。第2段落では、モチベーションの上げ方が多様な理由が示されています。最後には、この記事に示された考えを適用すべきとして、この文章での着地点を示しているのです。いきなり結論は書いていないことに注目してください。
これがストーリー展開です。読者の関心をひくためには重要な役割を果たしていることがおわかりいただけると思います。

ただ、そのストーリーは、良いストーリーである必要があります。そのときの秘訣は、「読者の意見と違うかもしれないことよりも、想定読者がわかっていること、感じていることからスタートする」ということです。上記の例では、「モチベーションはいろいろなところで問題にされている複雑なテーマですよね」という形で、読者の共感を呼んでいるのです。

読者は著者に心理的に納得することで、著者の文章に対して柔軟な態度が取れるのです。難解な専門書を読んだ時には精神的に柔軟にはなれないですよね?ビジネス書の冒頭部分はストーリー形式で始めることがキーポイントなのです。読者の知っていることをストーリーにして、読者の興味を引くところからはじめましょう。

しかも相手は忙しいビジネスパーソン。だからこそ、読み続けてもらいためには、著者が言いたいことをいきなり書き始めるのではなく、お互いの距離を確かめる必要があるのです。自分はそれを「文章をアイスブレイク」と呼んでいるのです。

皆さんの文章にはアイスブレイクはありますか?

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