11月4日は『漁魂』の著者大野さんの出版記念パーティーだった。本は7月にできていたのだけど、瞬〆が終息してから、とのことで、この日の開催となった。

会場となった船橋グランドホテルには150人ぐらいの人たちが集まった。漁業関係者だけでなく、研究者、漁業関係団体、船橋市副市長、市議会議長、県議会議員や、中学、高校、大学の同級生なども来ていて、それはそれは、すごい熱気。大野さんが熱い人なので納得なのだけど、それにしても、という感じ。本人もビックリしていた様子。

自分は5番目に祝辞を述べさせてもらった。「大野さんの想いをストレートに伝える本が作りたかった」ことを話した。漁業はまったく未知の分野だっただけに、お会いした当初から基本的なことをいろいろお尋ねした。いやな顔ひとつせず、答えてくれたことがこの本づくりの原点だった。巻末の「刊行にあたって」で「大野さんとの対話や大野さんの原稿との対話を重ね、自分を疑問は、大野さんの原稿がすべて答えてくれました」と書いたのはそのためだ。

書き方とか文章の組み立て方を知ることも大事だけど、それよりも何よりも、相手をよく知ろうとすることが、何を書けばいいのかを明確にさせてくれる気がした。この本は、自分自身との対話の連続でもあって、「この本づくりでいいのか?」を常に問うた。出来てみれば、「あーすればよかった、こーすればよかったも」と出てくるのだけど、読んだ方から感想を伺うと、ひとまずこの方向性でよかったのだとホッとする。会社員時代ではまったく考えられない本だ。

パーティーを通して感じたことは、大野さんの魚に対する愛情だった。魚はなによりも生活の糧なのだけど、それ以上に愛すべき存在なのだなあ、と。そこから自信も生まれてくるし、その自信に多くの人が惹きつけられる。「漁師が本を書くなんて…」という同業者も多いらしいけれど、それをやってしまうのは、愛情からでしかないんだなと思った。そして文章を書くなんて、だれもやっていない、面倒くさいことを。それをやってしまうところが、「出る杭漁師」といわれる所以なんだなと。その空気感を肌で感じられたことは大きかった。

魚の問題は、身近な問題。研究者や関係団体の方をお話して、自分ごとの問題としてどう考えればいいのか、どのように行動すればいいのかを問いかけてくれた機会だった。そして世の中「大事なだけど知らないこと」は多いのだなと。氾濫する情報の海で、本当に知らなければならないことは海の奥底にある気がする。そこにたどり着く熱意と体力を持たなければならないと思った。

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