今年のはじめから企画書の作成に取り組み、6月に企画が通過し、打ち合わせを重ね具体的な内容を固め、夏ぐらいから執筆に入ってもらった本が昨日・一昨日でほぼ手を離れた。とっても感じることの多い仕事だった。

最初はその著者の内容が今まで自分が手がけてきた内容とまったくかけ離れていたことに戸惑いまくった。「そのジャンルの本、一度も買ったことないよ」というレベル。クライアントになってもらうのをかなり躊躇したが、なんだか試されているような気もして、受けることにした。

一緒に仕事をさせてもらうと、「なんでこの人、いつも笑顔なんだろうか?」「なんでこの人、いつも感謝の言葉を伝えるのだろうか?」「なんでこの人、お詫びの言葉が素直に出てくるのだろうか?」などなど、その人の人間性とでもいうべきものに心打たれる日々。でもその人間性はいろいろな苦労や挫折に上に磨かれていることを知り、やっぱり人として成長することは大変だなとも思ったり。

これまで何冊も本を出してきた著者だけど、「書くべき内容を探り当ててもらって、書きたいことが書けた」と満足してもらったことが一番うれしい。

多くの人が憧れる立場だけど、その著者が話していたことは、「自分がやってきたことは、プロとアマの境目がなくて、これをやり続けてきていいのか、と途中苦しかった」と。「真似する人もたくさんいるし、本当にいろんな人が近寄ってきたし…」。「なんの資格(公的資格とか免許という意味ではなく、人に対する説得力ほどの意味)があって、これをやっているのだろう?」と思うとたちまち自信がなくなるというのだ。その著者がそんな言葉を口にするとはとっても意外だった。

でもこの気持ち、とってもわかるような気がする。編集の仕事だってそうだ。編集もだれでもできるといえばできる仕事。プロとアマの境界はないし、編集経験がなくてもひとり出版社を興せる時代。自分自身、出版の世界で自分が胸を張ってやれることはないのではないかと思ったこともある。

それを乗り越える方法は、目の前の人に全力を尽くすこと。来てよかった、あえて良かったと思ってもらえればそれが自信につながる。すべての人にそう思ってもらえるのは無理だけど、ひとりでもふたりでも増えればそれでよいのではないか。原稿には書いていないけれど、そういうことを感じていたのだと思う。その人が主催する会は常に大人気なのはその現れなのだと思う。ビジネスを抜きに考えれば、そういう人が読みたいという本にすべきだと思う。

この著者の本はひとりでも多くの人に手にとってほしいけれど、「本は読まれるべくして読まれる」と最近強く思う。いくらオンライン書店のリンクを貼って告知をしても興味がなければ買わないし、リンクがなくて買うことを忘れたのであれば、その本はその人にとってそれだけの本だったということだ。絶対に欲しい本は、あちこち調べまくってでも買うものだ。それが自然ということなんだと思う。

というわけで、著者に全力でプロモーションをお願いする版元の姿勢はどうかと思う。

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