出版経験のある人が次の本をどうすればよいかと相談にくることがある。その人の経歴をざっとヒアリングしてその人が書いた書籍を見ると、ズレがわかる。なにがズレているかというと、その人が書くべきとこちらがイメージしたテーマと実際に書いたテーマにである。

本来書くべきテーマというのは、こちらの勝手な推測かもしれないけれど、かなりあたっているような気がする。というのは、著者は専門性が高ければ高いほど、信念がしっかりしていて理想は高く、人間的にも人格者が多いのだけれど、その信念やら理想とか心構えなどの部分こそが書籍にすべきテーマだと思うのだが、このテーマは超有名人でないと書籍のテーマにはなりにくい。きわめて属人的なテーマだからだ。皆が知っている人でないとこのテーマでは書けない。皆こだわりをもった「生き方」をしているのだが、実際にこのテーマで書けるのは、極端な言い方をすれば、稲盛和夫氏のような人であろう。

書籍になりやすいのはやり方、方法である。企画するときに、読者の再現性や実現可能性などが議論に登るのはこのやり方をテーマにしているからだ。生き方のようなあり方だったら、そういう議論にはならない。

商業出版をすると、部数・印税率に応じて印税がもらえる。言い方を変えれば出資を受けているということで、ビジネス的に考えれば、出資者や株主の言うことを聞くのがセオリーだ。ということは、自分の書きたいことと編集者が考えていることが食い違っていれば、後者が優先されるということだ。これは致し方無いと考えたほうがよい。もちろん自分が書きたいことが書けるように編集者と意見交換をすることは必要なのだが。

ただ最終的には、企画もタイトルも定価も部数も、出版社の専権事項になる。出版社はそれでビジネスをしているので当然といえば当然だ。

ということはそもそも「あり方」で本を書きたいと思うのであれば、なかなか思うようにはいかないということだ。ただ自分でお金を出して本を作れば、いくらでも可能(これは後日まとめる予定)。とっても大雑把な議論で我ながら突っ込みどころ満載だけど、基本的にはそう思っているので、記しておく。

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